皮膚の色、
汗のお悩みについて

肌に関する悩みやトラブルには様々なものがあります。
中でも「皮膚の色」や「汗」にまつわる悩みは、外見上の問題などもあり、日常生活や社会生活に影響を及ぼして、精神的なストレスにつながってしまうことも少なくありません。
「皮膚の色」に関する悩みには、紫外線や加齢による「シミ」や「くすみ」、血管の拡張や炎症に伴う「赤み」、色素が抜けてしまう「白斑」などがあります。
それぞれ、原因や現れ方、治療法が異なりますが、いずれも皮膚の内因的・外的要因が関与しています。
一方、「汗」のトラブルには、過剰に汗が出てしまう「多汗症」や、汗にともなう「ニオイ」の悩みがあります。
これらもまた、日常の生活に支障をきたしたり、対人関係における不安を招いたりと、本人にとって深刻な問題となりえます。
これらは、とくに命に関わるようなものではないため、治療せずに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、QOLの低下につながるため、一度ご相談ください。
皮膚色のトラブル例
シミ・くすみ
シミやくすみは、顔や手の甲、首など、紫外線にさらされやすい部分に現れやすく、年齢とともに多くの方が気にされる悩みです。
シミには、紫外線が原因で生じる「老人性色素斑」、女性に多く見られるホルモンの影響による「肝斑」、ニキビやけがの後に残る「炎症後色素沈着」などが含まれます。
一方で、くすみは肌全体が暗く乾燥して見える状態を指します。
これらは加齢、紫外線の蓄積、ホルモンバランスの変化、肌の摩擦、炎症など多くの要因が絡み合って発生します。
セルフケアで改善が難しいこともあり、早めの医療的対処が有効です。
赤み
顔や身体に生じる「赤み」は、血管の拡張、皮膚の炎症、アレルギー反応など、さまざまな要因によって引き起こされます。
血管の拡張によって起こる赤みに、「酒さ」によるものがあります。
酒さは、顔、とくに鼻や頬などに持続的な赤みや丘疹、膿疱などの症状が現れる疾患です。
毛細血管が広がることなどで起こるとされていますが、まだ原因がよくわかっていないものです。
また赤みの原因として多い皮膚の炎症、いわゆる皮膚炎(湿疹)には、接触性皮膚炎(かぶれ)や脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎など、様々なものがあります。
皮膚炎は物理的刺激や化学的刺激、ハウスダストや金属などによるアレルギー、乾燥肌や皮脂分泌不全などの体質などによって引き起こされます。
→参考 髪のトラブル 接触性皮膚炎
→参考 顔のトラブル 湿疹・皮膚炎
このほか、ニキビや日焼け(紫外線の影響)など、皮膚は様々な原因で赤みを生じます。
背景にどのような原因があるかによって、赤みの程度や持続時間、かゆみ・痛みの程度などの症状、さらには治療法も変わってきます。
そのため、皮膚科専門医による正確な診断が重要になってきます。
治療は、症状と原因に従って行われます。
炎症が強い場合には、ステロイドや非ステロイド系の外用薬で赤みを抑え、必要に応じて内服薬を併用します。
血管の拡張が原因となっている場合には、自費診療とはなりますが、IPL治療などが有効な場合があります。
このほか、アレルギーが原因の場合は、ハウスダストや花粉などのアレルゲンを遠ざけるようにすることや、スキンケアの見直しも、症状の改善につながります。
白斑
「尋常性白斑」は、皮膚の一部の色素が抜け、通常の皮膚より淡い色で白っぽくなる状態を指します。
これは、メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)の働きが、局所的に低下または消失することで発症します。
全身に発症し得ますが、顔や手、腕、足などに左右対称に現れることが多く、境界がはっきりした白い斑点として認識されます。
原因は明らかではありませんが、ひとつには、メラニン色素を合成するための遺伝子の変異や、もともとメラノサイトが欠如しているなどの遺伝的要因が挙げられます。
ほかに自己免疫によりメラノサイトが攻撃されてしまうことが考えられており、バセドウ病や橋本病などの甲状腺の病気やⅠ型糖尿病などに合併して現れる場合もあります。
治療には、自己免疫を抑制する、ステロイドや、カルシニューリン阻害薬(タクロリムスやシクロスポリン)などの免疫抑制剤の外用が行われます。
また、メラニンの生合成を促進するとされる活性型ビタミンD3製剤も行われます。
このほか、紫外線療法(ナローバンドUVBなど)によって色素細胞の働きを促す方法があります。
症状自体は痛みやかゆみを伴うことはほとんどなく、ごく一部を除いては生命にかかわる疾患でもありません。
しかし、見た目が目立つことから、整容面で精神的な負担となる場合が多く、治療を検討すべき疾患です。
お悩みの方は、お気軽に当院にご相談ください。
多汗症
多汗症とは、日常生活に支障をきたすほど過剰に汗をかいてしまう状態をいいます。
わきの下、手のひら、足の裏、顔などに限定して起こる「局所性多汗症」と、全身に及ぶ「全身性多汗症」があります。
局所性のものは、思春期以降に発症しやすく、原因が明らかでない「原発性局所性多汗症」が大半を占めます。
また全身性のものには、ほかの疾患などによって引き起こされる「続発性全身性多汗症」があり、原因となる疾患としては、甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫、感染症などがあります。
また、低血糖や更年期、使用している薬剤に関連して引き起こされる場合もあります。
気温が高い時や、運動をしたときに発汗することは正常な生理的反応ですが、多汗症では生理的反応以上の発汗がみられるようになります。
状況によっては、高温時や運動時ではなくとも、大量に汗をかくことがあります。
たとえば手のひらに汗をかく患者さまでは、手が滑って日常動作に支障が出たりと、ノートなどに汗がしたたって字が書けないほどになったりすることもあります。
また、わきの下に過剰に汗をかく場合では、服に汗ジミができるなど、見た目も気になり、生活の質に大きな影響を及ぼしてしまいます。
このように、日常生活に支障をきたす場合は治療が必要となります。
治療には、制汗剤(塩化アルミニウム製剤)による外用治療が基本です。
これは、汗腺の出口を塞いで汗の分泌を抑制することが期待できます。
近年では保険適用となった外用薬も使用されるようになっています。
これは腋窩(わきの下)の多汗症に対するもので、副交感神経の働きを抑え、発汗を抑制する抗コリン作用をもった薬剤です。
重症の場合はボツリヌス毒素(ボトックス)注射によって発汗を抑える方法も有効です。
これは神経と汗腺の接続をブロックして過剰な汗の分泌を抑制するものです。
また極最近では、特発性手掌多汗症の外用薬も保険適応になりました。
当院では、患者さまそれぞれの症状の程度や、日常生活への影響を考慮して、適切な治療法を選択していきます。
汗のニオイ(腋臭症)
汗そのものは無臭ですが、皮膚表面の細菌と混ざり合うことで、いわゆる「汗のニオイ」が発生します。
人の体にはエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺があります。エクリン腺は全身に分布しており、特に手のひらや足の裏に多く存在します。
ここから分泌する汗は、主に水分からなっており、体温調節に役立っています。
多汗症では、このエクリン腺から分泌する汗が問題となります。
一方、アポクリン腺は、腋窩(わきの下)、外耳道、乳輪、肛門周囲など、毛根部に近い特定の部位に存在します。
ここから分泌する汗には脂質やタンパク質が多く含まれており、皮膚の常在菌に分解されることで、特有のにおい(体臭)の原因となります。
ホルモン変化のある思春期のほか、精神的な要因などによっても分泌は活発になります。
またアポクリン腺は、フェロモンの役割をしているとも言われています。
このアポクリン腺は、特にわきの下に多く分布しています。
そこから分泌する汗を原因とするにおいが強く、それが気になって日常生活に支障をきたしてしまうような場合、腋臭症(わきが)と呼ばれます。
わきがは、遺伝的要素や体質的な背景が関与していると考えられています。
腋臭症の治療としては、まず生活習慣の改善が重要になります。
不規則な生活リズムを整え、喫煙習慣を改めるなどが、わきがの軽減につながる場合があります。
喫煙はタバコに含まれるニコチンが汗腺を刺激し、多量の発汗につながって、わきがのにおいを強める可能性があります。
そのほか、腋毛を処理し、清潔を保つこと、殺菌成分を含んだボディソープや制汗剤を使用することなどによって、ある程度の効果が期待できることもあります。
わきがが日常生活や社会節活に影響を及ぼしてしまうような場合は、各種の治療を検討します。
汗の量が多い場合は、塩化アルミニウム溶液の外用薬を用います。
また、医療用のボツリヌス毒素を局所(わきの下)に注射することで、神経の活動を弱め、アポクリン汗腺を刺激するアセチルコリンの放出を減少させる、という治療もあります。
さらに、アポクリン腺を除去する手術もあります。
これは、わきの下の皮膚を切開し、アポクリン腺の分布している層を特殊な器機を用い、皮膚の裏側から切除するというものです。
これにより、9割以上の方で強いにおいは減少するとされていますが、適応につき、術前によく調べる必要があります。
汗のニオイが気になる方は、自己判断で悩みを抱え込まず、医師に相談することをおすすめします。