髪の毛(頭皮)の
トラブルについて

髪の毛(頭皮)のトラブルについて

髪の毛や頭皮の健康は、見た目の印象や日々の快適さに大きく影響するだけでなく、体調やストレスの状態を反映する鏡でもあります。
皮膚科・形成外科の領域では、「薄毛」や「脱毛症」など髪に関するお悩みから、「かゆみ」「赤み」「湿疹」「ふけ」など頭皮に関する疾患まで、さまざまな症状に対応しています。

毛には皮脂腺が発達しており、皮脂の分泌により毛と皮膚表面の保護を担います。一方洗いすぎや乾燥によってバリア機能が弱まり、刺激に敏感になりやすい部位でもあります。
また、日常的にシャンプーや整髪料、カラー剤などの化学物質にさらされるため、外的要因によるトラブルも少なくありません。

髪が抜ける、べたつく、乾燥する、かゆみが強い、赤みが出る、できものができるといった症状が続く場合には、単なる「体質」や「年のせい」で片づけず、早めにご受診ください。

髪・頭皮のトラブル例

薄毛・脱毛症

髪が薄くなる、抜け毛が増えるといった症状は、年齢に関わらず多くの方が悩まれている頭髪のトラブルです。
とくに男性に多くみられるのが「男性型脱毛症(AGA)」、女性に多くみられるのが「女性の男性型脱毛症(FAGA)」です。このほか「円形脱毛症」と呼ばれるものもあります。
これらはホルモンの影響、加齢、ストレス、栄養状態、自己免疫などが複雑に絡み合って起こります。

AGAは、主に思春期以降に発症し、額の生え際や頭頂部の髪が徐々に細く短くなる進行性の脱毛症です。
男性ホルモンの影響で毛の成長サイクルが短くなり、太くて長い毛が育たずに抜け落ちるという状態が続くことで主な原因と考えられています。

FAGAは、髪の毛が全体にわたって薄くなるのが特徴で、頭髪のボリュームが少なくなっていきます。
男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることで発症すると考えられており、ストレス、ダイエット、貧血、甲状腺疾患などが引き金になることもあります。

また円形脱毛症は、頭髪や体毛の一部が、突然丸く抜け落ちてしまうものです。
1ヶ所のみに症状が出るもの、複数個所に出るもの、頭部全体に及ぶもの、全身の毛に及ぶものなど、様々なタイプがあります。
原因にはストレスや自己免疫が関わっていると考えられています。

薄毛・脱毛症の治療は、原因に応じて異なります。
AGAには現在、様々な治療薬が登場していますが、これらは基本的に自費診療となります。
またFAGA性脱毛症については、原因となっている疾患などの改善を図ることが重要で、甲状腺疾患や貧血がある場合は、その治療を行い、過度なダイエットは注意して、体重をコントロールするようにします。またいくつか自費の外用薬も使用されることがあります。

円形脱毛症に関しては、塩化カルプロニウム液の外用薬やステロイドの外用などによる療法をおこないます。
近年ではJAK阻害薬という内服薬も登場し、効果が期待されています。
このほか、薬剤を塗布して炎症反応を誘発し、毛髪の再生を促す局所免疫療法や、紫外線を照射して免疫反応を調整する光線療法なども行われていますが、いずれにせよ医師に御相談下さい。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌の多い部位に赤みやかゆみ、皮膚のはがれ(フケ)を生じる皮膚疾患で、赤ちゃんから大人まで(とくに50代以降の男性)にみられます。
顔や頭皮、髪の生え際に多く現れ、患部の皮膚が赤くなり、脂っぽくて黄色っぽい、湿り気のあるフケや、乾燥したうろこ状のフケがボロボロと落ちるようになります。

重症化すると、広範囲に炎症が広がり、強いかゆみやベタつき、皮膚のただれなどを伴い、また、はがれた皮膚や滲出液が固まって、かさぶたのようになったものが、患部を覆う場合もあります。

原因は、主に皮脂を栄養とする常在菌マラセチア菌(カビの一種)の繁殖によって、炎症が起こると言われています。
なぜ繁殖したマラセチア菌に反応するのかはよくわかっていませんが、ホルモンバランスの乱れ、不適切な入浴や洗顔、ビタミン不足などが考えられています。
また睡眠不足などによるストレスは、皮脂分泌を過剰にするとも言われています。
悪化しやすい季節や体調の波があるのも特徴です。

治療には、抗真菌薬やかさぶたを軟らかくする成分を含むシャンプーで洗髪するようにします。
かゆみがある場合は、抗炎症薬を含むシャンプーを使用します。
また、ステロイド外用薬で炎症を抑える治療も行われます。

乾燥・かゆみ

頭皮の乾燥は、残留シャンプーや、湿度低下などが原因で起こります。
乾燥の症状として「フケ」がよくみられます。
本来、毎日洗髪していればフケは目立たないものですが、洗っているのにフケが目立つ場合は、頭皮の乾燥が考えられます。

また、乾燥した頭皮では、かゆみがよく生じます。
これは、乾燥すると皮膚のバリア機能が低下してしまい、外部からの様々な刺激を受けやすくなることで、炎症などが起こりやすくなるためです。
かゆいからと掻きむしってしまうと、傷や炎症が悪化します。
また、かさぶたができたり、そのかさぶたを掻いて剥がしてしまったりすることで、毛穴にダメージを与え、脱毛を生じる危険性もあります。

頭皮が乾燥する原因は、シャンプーや湿度低下のほか、乾燥肌であることも挙げられます。
皮膚のバリア機能では、フィラグリンなどの天然保湿因子が、少ない傾向にあります。
加齢も深く関係しており、年々、皮脂の分泌量が低下したり、保湿因子が減少したりすることで、加齢とともに皮膚は乾燥しやすくなります。

頭皮の乾燥やかゆみを改善するためには、まず洗いすぎに注意し、患者さま自身にあった、低刺激性のシャンプーを選ぶことが重要です。
当院では、患者さまの頭皮の状態をみながら、適切なシャンプーや、洗い方などのアドバイスが基本です。
必要に応じて、保湿剤や保湿ローションによって、頭皮を乾燥から守るようにします。
かゆみが強い場合には、抗アレルギー薬の内服や、炎症を抑える外用薬を併用します。
このほか、頭皮が乾燥する原因には、ストレスや生活習慣の乱れによる、皮膚のターンオーバーの乱れも関わっていると言われていますので、生活のリズムを保っていくことも大切になります。

頭皮は見えにくい部分であるため、乾燥の初期段階では見逃されやすく、慢性化しやすい点にも注意が必要です。
フケなどの症状がみられた場合は、原因を見極め、頭皮に合ったケアを継続することが大切です。

接触性皮膚炎

頭皮のかゆみなどの症状を引き起こす原因には様々なものがありますが、シャンプーを新しいものに変えたり、新たなカラーリング剤を使いだしたりした際に症状が現れた場合は、接触性皮膚炎が疑われます。

接触性皮膚炎には、比較的すぐに反応が出る「一次刺激性接触皮膚炎」と、少し時間がたってから起こる「アレルギー性接触皮膚炎」があります。
これらは頭皮だけではなく、身体のどの部位にも発症する可能性のあるものです。

一次刺激性接触性皮膚炎は、皮膚が物理的、化学的なものによって刺激され、皮膚にダメージが与えられることによって引き起こされます。
アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質(アレルゲン)に対する免疫反応が引き金となるものです。

頭皮に接触性皮膚炎が起こると、かゆみや赤み、水ぶくれ、湿疹などの症状が出現します。
放置していると、毛根がダメージを受け、薄毛や脱毛を引き起こしてしまう場合もありますので、注意が必要です。

接触性皮膚炎が疑われる場合は、まず、原因となっている物質などを特定することが重要です。
一次刺激性の場合は、化学薬品や物理的刺激などが原因となります。
またアレルギー性では、ハウスダストや花粉、染料や植物由来の成分、ラテックス、アクセサリーに使われている金属などが原因物質(アレルゲン)となります。

使用しているシャンプーやリンス、カラー、ヘアケア製品などの成分表を確認し、過去にアレルギーを引き起こしたものが入っていないかをチェックします。
また頭皮以外の身体の部分にも、症状が出ていないかを確認することも重要です。

治療は、まず原因物質(化学薬品やアレルゲン)の使用を中止することが第一です。
アレルゲンがわからない場合は、パッチテストなどで調べます。
そのうえで、炎症を抑える外用薬(ステロイドなど)を使用し、かゆみや腫れを抑えます。

再発を防ぐためには、洗浄力が強すぎるシャンプーは避け、低刺激性のものを選びましょう。
合成香料や着色料などの成分が入っていると、刺激によって炎症が起こる可能性があります。
頭皮の接触性皮膚炎を予防するためには、自分に合ったスキンケア製品を選び、頭皮に過度な刺激を与えない生活習慣を心がけることが大切です。

最近よく見られる頭の真菌症

トンズランス菌という白癬菌の仲間による頭皮と毛髪に好発する真菌症が、近年頻繁に報告されています。これは、もともと南米の原住民に見られている頭髪の真菌症が、体の接触を伴うスポーツを介して、全世界に広がってきたと考えられています。

かゆみや赤みといった症状は軽度で、頭皮の一部や頚部、皮膚がこすれやすい部位に淡い赤みと皮むけ(鱗屑)を生じます。誤った治療により、頭髪の根本深くまで感染が広がると、赤みや膿を伴い、脱毛(ケルズス禿瘡)を生じることがあります。

診断は、鱗屑を直接顕微鏡で観察する方法(真菌検鏡)やヘアブラシを用いた真菌培養により確定します。

治療は、抗真菌薬の内服・外用を行います。

最も大切なのは、家族ならびに同じスポーツクラブのメンバーを一斉に調べて、みんなで治療することです。そうしないと、何度も本感染症を繰り返してしまうことも多いです。

頭皮ニキビ・湿疹

ニキビは毛穴が詰まり、そこに細菌が繁殖することで発生するものですが、このニキビは頭皮にもみられます。
頭皮は毛穴が多数あって、皮脂分泌も多いため、ニキビができやすい部位とも言えます。

→ 参考 顔のトラブル ニキビ・吹き出物

髪の毛に覆われているため気づきにくく、櫛で髪をとかしたときに痛みや違和感で気づくこともあります。
症状としては、痛みやかゆみ、しこりを伴い、悪化すると膿をもったり、かさぶたができたりすることもあります。
また強く掻いたり潰したりすると、毛穴にダメージが加わり、脱毛したまま再度髪が生えてこない場合もあります。

原因は一般のニキビと同様です。
さらに頭皮の場合、シャンプー、整髪料などの残留や、髪の毛や帽子による蒸れなどが原因となって、細菌が繁殖しやすく、症状が悪化しやすい傾向にあります。
男性ではとくに皮脂の多い後頭部や頭頂部に多く発症し、女性ではストレスや生理周期の影響を受けることが多いとされています。

このほか頭皮では、ニキビに似た湿疹がみられることもあります。
湿疹の種類としては脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などが考えられます。

→ 参考 脂漏性皮膚炎
→ 参考 接触性皮膚炎
→ 参考 顔のトラブル 湿疹・皮膚炎

頭皮ニキビの治療は、一般のニキビと同様に、外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)によって行います。
湿疹の治療については、原因によって治療法を選択していきます。
どちらにしても、シャンプー選びや洗髪方法を見直し、適切な頭皮ケアをしていくことが大切です。
頭皮ニキビは放置していると、症状が繰り返される場合や広範囲にわたってしまう場合がありますので、お早めにご相談ください。