プライベートパーツの
トラブルについて

プライベートパーツに生じる皮膚のトラブルは、見た目にはわかりづらく、他人にも相談しにくいことが多い分、ご自身の中で長く悩みを抱えてしまいがちな症状のひとつです。
「かゆみ」や「赤み」「痛み」「できもの」など、症状の種類は多岐にわたります。
また、その原因もアレルギーや感染症、摩擦や多湿といった物理的な刺激、ホルモンの変化、皮膚の構造的特徴など複雑です。
プライベートパーツの皮膚は非常に薄く繊細である上、通気性が悪く、汗や分泌物がたまりやすいため、皮膚トラブルが起こりやすい部位です。
また、下着の素材や生理用品、洗浄剤、毛処理などの影響で刺激を受けやすく、日常的なケアが重要な部位でもあります。
こうしたトラブルは放置したり、市販薬で治療したりしていると悪化する場合があり、さらに注意すべき疾患が潜んでいる場合もありますので、お早めに、ご遠慮なく、当院までご相談ください。
プライベートパーツのトラブル例
かぶれ・湿疹
様々な刺激で起こる「かぶれ(接触性皮膚炎)」や、皮膚のバリア機能が弱まることで起こる「湿疹」は、プライベートパーツでもよくみられる皮膚トラブルです。
会陰部、被毛部、太ももの内側、肛門周囲、お尻など、陰部・外陰部の様々な場所に発症します。
男性では陰嚢、陰茎にも発症する可能性があります。
症状としては、薄い赤みやかゆみが現れ、さらに悪化すると、ヒリヒリ感、腫れ、時には小さな水ぶくれやただれが出現します。
放置していると皮膚が厚くなり、かゆみも強まります。
それにより掻いてしまうと、症状はさらに悪化してしまいます。
原因には、汗による蒸れ、皮脂の刺激、尿や便の汚れが関係しています。
これらが皮膚を刺激することにより、かぶれ、湿疹が生じます。
プライベートパーツは摩擦や湿気が多く、通気性が悪いため、軽い刺激でも炎症が起こりやすくなります。
このほか、下着やナプキン、トイレットペーパー、ボディソープなどが刺激の原因となる場合もあります。
治療には、まず清潔に保ち、原因となる刺激を避けることが大前提です。
そのうえで、炎症を抑えるためのステロイド外用薬や、かゆみに対する抗ヒスタミン薬などを適切に使用していきます。
皮膚が乾燥している場合は、保湿剤によるスキンケアも併用し、皮膚の回復を助けます。
ただし、洗い過ぎたりボディソープが体質に合わなかったりすると、皮膚が乾燥するなどして皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
再発を防ぐためには、洗い方の見直し、さらに下着の素材などにも注意を払うことが必要です。
カンジダ症・細菌感染
かゆみとともに、白くポロポロしたおりものや赤み、腫れを伴う症状がある場合、カンジダ(真菌)による感染が疑われます。
カンジダ菌は、健康な人の皮膚、口の中、消化管などに存在する常在菌ですが、何らかの原因でカンジダ症を発症する場合があります。
カンジダ症には、皮膚に感染を起こすカンジダ皮膚炎のほか、女性の陰部に感染を引き起こす外陰・腟カンジダ症、口腔内に感染を引き起こす口腔咽頭カンジダ症などがあります。
原因としては、基礎疾患や疲労、ストレスなどがあげられます。
特に糖尿病などでは免疫力が低下している場合があるため、注意が必要です。
また、抗生物質などの薬を使用していると、体の中の菌のバランスが崩れ、カンジダ菌が増殖するリスクが高まります。
さらに高温・多湿の状態になっていると、カンジダ菌の増殖を助長します。
外陰・腟カンジダ症は、性行為によって感染するというイメージがあるかもしれませんが、実際に性交によって感染する確率は、わずかと言われています。
症状としては、強いかゆみが現れ、おりものが増加します。
おりものは酒粕状やヨーグルト状などともいわれ、腟壁や子宮頸部に白い塊となって現れるようになります。
さらに赤みや腫れ(浮腫み)、ヒリヒリとした感じが生じることもあり、性交時痛や排尿時痛を覚えることもあります。
カンジダ症の治療は、抗真菌薬(外用・内服)の使用が基本となります。
あわせて患部を清潔にし、蒸れないようにすることが重要です。
また下着は、あまり締め付けず、擦れないものを選びましょう。
プライベートパーツの感染症としては、ほかにクラミジア・トラコマチスという細菌によるもの(クラミジア感染症)や、トリコモナス原虫によるもの(トリコモナス症)、ヒトパピローマウイルスによるもの(尖圭コンジローマ)、ヘルペスウイルスによるもの(性器ヘルペス)などがあります。
これらには一部、症状が似ているところもありますが、原因が異なり、治療法も異なります。
そのため、治療に当たっては、しっかりと確定診断をすることが重要です。
市販薬などを使っていると、悪化してしまう場合もありますので、躊躇せず、お早めにご受診ください。
尖圭コンジローマ・ヘルペス
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるウイルス性の性感染症のひとつです。
外陰部や肛門周辺、膣、陰茎などに小さな白〜ピンク色のイボが現れます。
数は一つだけのこともあれば、複数が集まって花のように広がることもあり、さらに集まって塊になる場合もあります。
痛みやかゆみはあまりないものの、見た目の異常が主な症状となり受診されることが多いようです。
ただし、かゆみや灼熱感、不快感などが症状として現れる場合もあります。
性行為を介して感染することが多く、パートナー間での感染にも注意が必要です。
しかし中には、乳幼児や高齢の方、性交渉のない方でも発症する場合があり、入浴やトイレ、脱毛器の使いまわしといったことでの感染例もあります。
尖圭コンジローマの治療には、皮膚免疫刺激薬であるイミキモドクリームの外用が行われます。
ほかに液体窒素による凍結や、電気焼灼、外科的切除などの物理的な除去が行われる場合もあります。
尖圭コンジローマは一見改善したように見えても、再発することが多いため、イボ消退後も数か月間は経過観察する必要があります。
一方、性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こります。
赤みやかゆみに始まり、小さな水ぶくれができ、強い痛みを伴うのが特徴です。
男性では陰茎、亀頭部に、女性では外陰部に症状が現れ、水ぶくれが破れると、潰瘍状態となります。
また発熱や全身のだるさを伴うこともあります。
ヘルペスについては、抗ウイルス薬の内服・外用で症状の軽減が期待できます。
重症例では点滴を行う場合もあります。
ただしヘルペスウイルスは、初感染後、症状が治まったように見えても感覚神経節に潜伏していて、免疫低下や性行為の刺激などで再活性化し、再発を繰り返します。
そのため、予防的に抗ウイルス薬を持続的に投与する場合もあります。
黒ずみ・色素沈着
プライベートパーツ(デリケートゾーン)にみられる「黒ずみ」は、女性の患者さまで多くみられる悩みです。
この黒ずみとは色素沈着のことで、皮膚に刺激を受けることで、メラニン色素が過剰に生成されることによって起こります。
通常、皮膚のターンオーバーによってメラニン色素は排出されますが、色素産生が長く持続すると排出が間に合わず、色素沈着が生じます。
とくに陰部は生理的色素沈着部位でもあり、黒ずみが残りやすい部分です。
このような色素沈着は、病気ではありませんが、見た目の問題からコンプレックスにつながることがあります。
当院では、こうしたお悩みの相談にも応じています。
色素沈着を引き起こすものとしては、下着やトイレットペーパー、ナプキンなどによる摩擦、シェービングによる自己処理の刺激、乾燥や蒸れ、かぶれ、かゆみによる掻きこわし(炎症)の積み重ねなどがあります。
また加齢や妊娠によるホルモン分泌の変化でも、黒ずみが起こります。
色素沈着は、一度発症してしまうと元に戻すのはなかなか難しいものですが、ケアを行うことで改善できる場合があります。
まず、なるべく刺激を遠ざけ、保湿して乾燥を防ぐことが重要で、保湿クリームなどを用います。
これにより皮膚のバリア機能を保ち、ターンオーバーを正常なものに維持し、さらに炎症などの発症を抑制します。
このほか、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体、ハイドロキノンなど、メラニンの生成を抑制するなど、美白成分を含む外用薬を使用します。
効果が期待できるのは、医師の処方が必要な薬で、なおかつ、その人にあったものであることが大切です。
デリケートゾーンの黒ずみでお悩みの場合は、一度、当院にご相談ください。