顔の皮膚トラブルについて

顔は常に外気や紫外線、乾燥などの環境刺激にさらされるとともに、ストレスなど、感情や体調の変化も反映されやすい場所です。
皮膚科・形成外科においても、「顔の皮膚トラブル」に関するご相談は非常に多く、日常的なお悩みから、慢性的な皮膚疾患、美容的なご相談まで幅広く対応しています。
顔の皮膚は体の中でもとくに皮脂腺が多く、外的刺激に敏感である一方、皮膚のバリア機能も繊細なため、ちょっとした要因でも肌トラブルが発生する場合があります。
思春期や大人に多い「ニキビ」や「吹き出物」、かゆみや赤みを伴う「湿疹」、季節の変わり目に悪化する「乾燥肌」、外見に関わる「シミ」や「くすみ」、さらに「赤ら顔(酒さ)」といった症状も、患者さまの生活の質(QOL)に大きな影響を与えるものです。
当院では、患者さま一人ひとりの症状とお悩みに合わせた診療を行っています
顔の皮膚トラブル例
ニキビ・吹き出物
ニキビ(尋常性ざ瘡)は、毛穴が詰まり、そこにアクネ菌などが繁殖することで炎症を起こす皮膚疾患です。以前とは異なり、最近ではいわゆる乾燥肌の方に生じる傾向があります。
思春期のホルモンバランスの変化によって起こることが多いですが、大人になってからのニキビ、いわゆる吹き出物も少なくありません。
顔ではとくに額、頬、あご、鼻のまわりに出やすくなっています。
原因としては、毛穴が詰まり皮脂が溜まり、皮膚の細菌が増殖することによって起こります。
増殖した細菌が炎症を引き起こし、赤いニキビを発生させます。
皮膚の乾燥、ホルモンバランスの変化、ストレス、食生活影響などが原因として考えられています。女性では性周期や化粧品などが影響することもあります。
ニキビは段階によって、毛穴が詰まり、皮脂が内部にたまっている状態の「白ニキビ(コメド)」、炎症を起こし赤く腫れた状態の「赤ニキビ(丘疹)」、化膿した「黄ニキビ(膿疱)」といった段階で変化していきます。
段階によって治療法が異なります。
白ニキビの段階では、毛穴の詰まりを改善する効果や抗菌効果のある過酸化ベンゾイル、アダパレンなどの塗り薬を使用します。
また炎症を起こしている赤ニキビでは、抗菌薬の塗り薬や、炎症が強い場合は飲み薬を使用する場合があります。
このほか、皮膚の状態に応じて洗顔やスキンケアの見直しなどの再発予防のためのアドバイスも行っていきます。
にきびは炎症が長引いたり強かったりする場合、治癒後に凸凹した"ニキビ痕(跡)"が皮膚に残ってしまいます。
また自己流でつぶしてしまうことや、市販薬で長期間対応するのは、悪化や色素沈着の原因になることがありますので、お早目に専門医の診療を受けることをお勧めします。
湿疹・皮膚炎
湿疹・皮膚炎は、赤み、ブツブツができ、かゆみ、ヒリヒリ感、カサつきなどを伴う慢性または急性の皮膚の炎症です。
顔に湿疹・皮膚炎ができる原因としては、接触性皮膚炎(かぶれ)やアトピー性皮膚炎、脂漏性湿疹など、様々なものがあります。
近年では、マスク着用の機会が多く、「マスク湿疹」と呼ばれることもあります。
マスクの素材などに含まれる成分に反応してかぶれを起こしたり、肌との摩擦や蒸れることで、皮膚炎を発症しやすくなると考えられています。
また、マスクを外した際に、急激に肌が乾燥し、バリア機能が低下して、炎症が起こりやすいとも考えられます。
このほか、化粧品やスキンケア商品、日焼け止めなどが原因となる場合もあります。
アトピー性皮膚炎は、顔に発症しやすい皮膚疾患でもあります。
とくに乳児期は口の周りなど顔に発症することが多くみられます。
幼児期になると首や手足の関節に現れるようになり、思春期・成人期では、頭や首、胸、背中などの上半身にみられます。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下していること、アレルギー体質であることなどが原因となって起こると考えられています。
ダニ、ハウスダスト、花粉などの環境によるアレルゲンや食物によるアレルゲン、さらにストレスなどの要因が加わることで、アトピー性皮膚炎が発症したり、悪化したりします。
顔は様々な刺激にさらされやすいこともあるため、成人以降も顔に発症される方が少なくありません。
慢性的な湿疹を繰り返すことで赤ら顔や、色素沈着が残ってしまうこともあります。
早めの適切な治療を行うことが重要です。
治療は、主に炎症を抑えるためのステロイド外用薬や保湿剤の使用が基本です。
かゆみが強い場合には抗アレルギー薬の内服を併用することもあります。
アトピー性皮膚炎では、近年、非ステロイド外用薬や生物学的製剤など、効果的な薬も登場しています。
同時に、生活習慣の見直しやアレルゲンの除去、スキンケアなどを行っていくことも大切です。
肌荒れ・乾燥肌
肌荒れとは、肌に赤みや湿疹、ニキビ、かさつき、かゆみなどの症状がみられるもので、多くの場合、肌が乾燥している状態となっています。
皮膚は乾燥するとバリア機能が低下し、外からの刺激に弱くなります。よって肌荒れが起こりやすくなります。
肌が乾燥する原因としては、冬場の空気の乾燥や、夏場にエアコンの効いた部屋に長時間いること、日焼けをすること(紫外線の影響)などが挙げられます。
このほか、加齢や栄養不足、睡眠不足、ストレス等による皮脂分泌の低下や、洗顔のし過ぎなども肌を乾燥させてしまいます。
皮膚は乾燥すると、バリアを構成する角質細胞間の「天然保湿因子(NMF)」や細胞間脂質、角質層表面の皮脂膜が減少しやすくなります。
それにより、角質層を通じて刺激物やアレルゲン、細菌などが侵入しやすくなり、炎症を起こして様々な症状が現れるようになります。
また乾燥肌になると、皮膚表面近くまでかゆみを感じる神経線維が伸びてきて、ちょっとした刺激でもかゆみを感じるようになると考えられています。
このため肌を掻くことで、さらにバリア機能が損なわれ、炎症が悪化してかゆみが増すという悪循環に陥る場合があります。
治療の基本は保湿です。
ヒアルロン酸やヘパリン類似物質、尿素やセラミドなどを含む保湿剤を用いて、皮膚バリアの修復を図ります。
かゆみなどの症状が強い場合は、弱いステロイドや非ステロイド外用薬を一時的に使用することもあります。
このほか、洗顔しすぎない、刺激の少ない洗顔料や化粧品を使用する、洗顔後や入浴後は保湿をしっかりとする、といった日常のスキンケアの見直しも大切になります。
また季節を問わず、紫外線対策をしっかりとしましょう。
シミ・くすみ
顔のシミやくすみは、年齢とともに増えてくる悩みのひとつで、とくに女性にとっては美容上の大きな関心事です。
シミは顔に現れる茶色い色素沈着を指し、主に紫外線が原因となっておきるものです。代表的なものに老人性色素斑があります。
ほかにも肝斑や雀卵斑(そばかす)、炎症後色素沈着、後天性真皮メラノーシスといったものが混在します。
老人性色素斑は、長年の紫外線のダメージが少しずつ蓄積され、作られたメラニンが肌に沈着してできるものです。
頬やこめかみなど、日光に当たりやすい部分に発症することが多く、境界がはっきりしているのが特徴です。
また肝斑は、頬骨のあたりによくみられ、左右対称に現れることが多く、ホルモンバランスの乱れや摩擦、紫外線などが原因となると考えられます。
雀卵斑(そばかす)は、鼻や頬などに細かく点在する薄茶色のしみで、遺伝的要素が強いと言われています。
後天性真皮メラノーシスは皮膚のやや深いところに出来る色素斑で、少し青黒くみえるものです。
このほか炎症後色素沈着によるシミがあります。
これはニキビや傷、虫刺されなどの跡にできてしまうもので、多くは少しずつ薄くなっていきますが、長く残ってしまう場合もあります。
一方「くすみ」は、肌の明るさや透明感が低下し、暗い印象になってしまうものです。
紫外線や摩擦によって、全体的にメラニンが増えて浅黒く見えてしまうものや、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れてしまうことで、肌がゴワついてくすんで見えるもの、さらに青白くくすんで見えるものなどがあります。
シミやくすみの治療としては、メラニンの生成を抑える外用薬(ハイドロキノンやトラネキサム酸など)や、美白成分を含むスキンケアの併用が基本となります。
また、症状に応じてIPL (intensive pulsed light)療法、イオン導入、ピーリングなどの施術を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
こうした治療は、基本的に保険適用外(全額患者さま負担)の自由診療となります。
詳しくは医師にご相談ください。
ただし、太田母斑や異所性蒙古斑といった、いわゆるアザが顔などにある場合は、保険適用となる場合があります。
こちらも詳しくは医師にお問い合わせください。
酒さ(赤ら顔)
酒さは、顔、とくに鼻や頬などに持続的な赤みや毛細血管の拡張、丘疹・膿疱などを伴う慢性の炎症性皮膚疾患です。
「赤ら顔」として知られていますが、単なる肌のほてりとは異なり、医学的治療を必要とする場合があります。
40~50代の女性に多く見られますが、男性にも起こります。
原因は不明で、はっきりと解明されていませんが、皮膚の血管の異常な反応、皮膚の常在菌の影響、紫外線やストレス、飲酒、香辛料などが悪化因子として知られています。
気温差や入浴などでも症状が強く出ることがあります。
症状は進行度合いによって異なります。
初期の段階では顔が赤くなったり、ほてったりする症状が、繰り返しみられるようになりますが、次第に顔の表面の毛細血管が拡張し、常に赤みがある状態となります。
これらは毛細血管拡張型の酒さと言われます。
これが進むと、赤い盛り上がりやニキビのようなブツブツが現れるようになり、丘疹膿疱型の酒さと呼ばれます。
さらに進行すると、鼻が赤く膨らみ、ごつごつと変形してくる「鼻瘤(びりゅう)」という状態を引き起こすことがあります。
これは主に男性にみられますが、日本人では少ないとされています。
ほかに眼に影響を与え、眼の充血、異物感、乾燥、かゆみ、羞明(まぶしさ)などの症状を引き起こす「眼型酒さ」を生じることもあります。
治療にあたっては、まず悪化に関わっていると考えられる生活習慣などの因子を取り除くことが大切です。
たとえば紫外線対策をする、飲酒や辛いものの食べ過ぎを控える、ストレスを溜めないようにする、といったことです。
またスキンケアも重要で、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用するなど、肌への負担を極力減らすことが求められます。
治療法としては、主に炎症を抑える塗り薬(抗炎症薬、メトロニダゾールなど)や内服薬を使用します。
膿を持ったブツブツに関しては、比較的早くに改善することが多いですが、赤みの改善に関しては時間がかかる傾向にあります。
赤みの原因となる毛細血管の拡張に対しては、IPL治療などが検討されることもあります。
ただしIPL治療は、基本的に自費診療となりますので、医師にご相談ください。
酒さは、慢性の経過をたどることが多いため、継続的な管理が必要となります。